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自分たちのサッカーとは? 全国高校サッカー選手権出場校から、チームがめざす方向性を考える

公開:2013年1月29日 更新:2013年1月30日

キーワード:ポゼッション育成

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育成年代の取材をしていると良く監督、選手から耳にする言葉があります。それは、「自分たちのサッカー」という言葉です。この言葉の多くが、繋ぐサッカーや、個人技を尊重したり、ボールを大事にするサッカーという意味合いとして使われることが多いのではないでしょうか。
 
しかし昨年夏、総理大臣杯で優勝した阪南大学の須佐徹太郎監督は「自分たちの目指すサッカーというのをちゃんと説明できる人はほとんどいない」と話します。今回は“自分たちのサッカー”について、考えてみたいと思います。
 
 

■“自分たちのサッカー” が突き当たる一つの壁

“自分たちのサッカー”を発揮し、大会を勝ち上がると一つの壁が出てきます。県大会の上位や全国大会に出ると、必ず自分たちよりレベルが上のチームと戦うチームと対戦する機会が増えます。
 
そうしたギャップを口にするのは富山第一高校の大塚一朗監督です。
「自分が現役の時は点を獲っている方が楽しいと思ったから、指導者になってからは攻撃しかやっていなかった。カウンターなんて僕の哲学に反する、絶対やらないぞって思っていた」と話すように
富山第一には大塚監督が目指す“攻撃的なサッカー”という自分たちのサッカーがあります。
 
県内の学校との試合では、ボールを持てる時間が長いため、自分たちのサッカーが出来ますが、2種年代の全国を東西2地域に分けたリーグであるプレミアリーグでは格上の相手が多く、ボールを持たれる時間が増えます。攻撃的なサッカーを目指していても、ボールを持つことが出来なければ、それは絵に描いた餅。ボールを持つためにも、自然と守らなければいけない場面が増えてきます。そこで、富山第一が取ったのは“守ってカウンター”を磨くという考え方でした。県では攻撃的なサッカー、全国レベルではカウンターサッカーと相手チームの状況に応じて、“自分たちのサッカー”を使い分けるスタイルで並み居る強豪がひしめくプレミアリーグWESTで残留を果たすことが出来ました。
 
 

■ポゼッションに対抗すべく、“カウンター” が一つの主流に

ポゼッションというボールを大事にするサッカーが全盛の中、鵬翔高校の優勝で幕を閉じた先日の全国高校サッカー選手権ではボールが持てるチームに対抗するため、富山第一のようにカウンターサッカーを売りにするチームも増えていました。そうしたチームもいずれもがボールを持つだけの技術力はあるものの、あえて、守備を重視したもの。ただ、単にボールを大きく蹴り出すのではなく、長いボールを正確に意図して繋ぐ、見ていて楽しいカウンターサッカーで、これまで一般的で“否”とされてきたカウンターサッカーではありませんでした。
 
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準優勝を果たした京都橘高校もそうしたチームの一つ。本来はポゼッションスタイルのチームでしたが、夏までチームの結果が出なかったため、ショートカウンター主体のサッカーへと変更し、結果を残しました。サッカーには自分たちのチーム11人だけでなく対戦相手がいます。自分たちのサッカーをするだけでなく、相手をリスペクト(研究・観察)して、相手の長所を消しながら戦わないといけません。
 
選手権で見せた戦いは確かに、京都橘らしい目指すポゼッションサッカーではなかったかもしれません。しかし、 --粘り強く相手の攻撃を防ぎ、仙頭啓矢、小屋松知哉という速さのある2トップへとボールを繋ぐ-- こうした戦いぶりは、チームにいる選手の個性を最大限、発揮する“自分たちのサッカー”だったと思います。そして、身体を張って相手からボールを奪う姿や、セカンドボールを我先に拾おうとする姿はポゼッションサッカーとはまた違う、サッカーの本質である、“ボールを大事にする”サッカーでした。
 

■“自分たちのサッカー” に正解はない

以前紹介した「めざすは技術と判断力とポジショニングにこだわるサッカー 野洲高校山本監督に聞く」のようにどんな状況、相手であってもブレずに、自分たちのサッカーに取り組む姿勢も、もちろん大事です。ただ、“自分たちのサッカー”という言葉にこだわりすぎると見失ってしまうものもあります。特に育成年代では人の往来が激しく、毎年、在籍する選手は変わるため、取り組む戦術はそのチームに合っているか、今いる選手たちの個性に合っているかは刻一刻と変わっていきます。
 
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富山第一のように大会に応じて戦い方を代えるスタイルも、京都橘のようにいる選手たちの個性を生かすのも、野洲のように見ている人を楽しませるスタイルも“自分たちのサッカー”の一つ。“自分たちのサッカー”に正解やゴールはありません。自分たちがどうありたいか、何を目指すためにどんなサッカーをするのかを指導者や選手たちが常に考え続けることが大事なのではないでしょうか。
 
もうすぐ卒団、入団のシーズンがやってきます。新しいシーズンを機に“自分たちのサッカー”とは何なのか? もう一度見直してみてはいかがでしょうか?
 
 
森田将義(もりた・まさよし)//
関西を拠点に全国津々浦々、大学、U-18、U-15など育成年代を追いかけるフリーのサッカーライター。主にELGOLAZO、ゲキサカ、スポーツナビなどへ寄稿。ライター業のスタートはテレビの放送作家という異色の経歴も持つ。
●E-mail:jnfpr1234@yahoo.co.jp
 
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