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サッカーの基本理念から考える「オフサイド」はなぜ反則なのか?

2012年10月12日

キーワード:ゲームルール審判

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「なんでゴールじゃないの?」「いまの何?」
 
 サッカーを始めたばかりの子どもたち、それを見守る親御さんたち、サッカーを見始めたばかりの観戦者、サッカーをあまり観ない人たちが、まず始めに不思議に思うこと。それがオフサイドのルールではないでしょうか。ボールとゴールがあればいい、シンプルなルールこそサッカーが世界中で愛されている理由のひとつではありますが、この「オフサイド」につまずいて、せっかく興味を持ったサッカーから疎外感を感じてしまう人も多いようです。
 
 正式にはサッカー競技規則の第11条「オフサイド」に規定されているこのルール。今回は『オフサイドはなぜ反則なのか?』について、サッカーの基本理念に立ち返って考えてみたいと思います。根幹にあるのは「サッカーは紳士のスポーツ」だということ。細かいルールを勉強するより、サッカーの精神を学ぶことで見えてくることがあるかもしれません。
 
 

■オフサイド、説明できますか?

『オフサイドはなぜ反則か?』これは、オリジナルの問いかけではなく、スポーツルールを中心としたスポーツ社会学の権威、故・中村敏雄先生の著書のタイトルにもなっています。オフサイドのルールは兄弟スポーツでもあるラグビーやアメリカのメジャースポーツ、アメフトやアイスホッケーにもありますが、サッカーのルールでは、最初にオフサイドポジションが定義されています。
 
オフサイドポジションの定義
※オフサイドポジションにいること自体は、反則ではない。
 
●競技者は、次の場合オフサイドポジションにいることになる。
・競技者がボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手競技者のゴールラインに近い。
 
●競技者は、次の場合オフサイドポジションにいないことになる。
・競技者がフィールドの自分のハーフ内にいる。または、
・競技者が後方から2人目の相手競技者と同じレベルにいる。または、
・競技者が最後方にいる2人の相手競技者と同じレベルにいる。
 
 
次に反則になる場合と、ならない場合の違いです。

●反則の場合
ボールが味方競技者によって触れられるかプレーされた瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっていると主審が判断した場合にのみ罰せられる。
・プレーに干渉する。または、
・相手競技者に干渉する。または、
・その位置にいることによって利益を得る。
 
●反則でない場合
競技者が次のことからボールを直接受けた時はオフサイドの反則ではない。
・ゴールキック
・スローイン
・コーナーキック
 
 
 
最後に「違反した場合は間接フリーキックですよ」という罰則の定義がされています。

●違反と罰則
オフサイドの反則があった場合、主審は違反の起きた場所から行う間接フリーキックを相手チームに与える。
 
 
なんだか難しそうですね。言葉を尽くして説明すればするほど伝わりづらくなってしまうのがオフサイド。そこで、「オフサイドの理念」についてお伝えしたいと思います。
 
 

■オフサイドは“待ち伏せ禁止”

 体育の授業でバスケットボールをしたことがある人は多いのではないでしょうか。急造の組み分けで決まったチームで明確なマークをつけることなどありませんから、授業のバスケットは混沌としています。そんなとき、背の高い選手、シュートの上手い選手をゴール前に置いておいて、ロングパス一本で得点を重ねる。こんなチームっていませんでしたか?
 
 もしサッカーにオフサイドがなかったら? サッカーは得点を目的にするゲームですから、授業の無秩序なバスケットボールのように、カウンターの応酬、メッシやクリスチアーノ・ロナウドの頭上をロングパスが行き交うだけの退屈なゲームになってしまうかもしれません。オフサイドのないサッカーは、試合の面白さが削がれるだけでなく、ゴール前での“待ち伏せ”が横行するつまらないスポーツに成り下がってしまいます。
 
 サッカーに大金が費やされ、勝利至上主義に流されがちな昨今。プロスポーツとして発達したサッカーばかりを観ていると忘れてしまうこともありますが、サッカーは英国パブリックスクールの紳士がするスポーツとして誕生しました。競技規則の反則事項に「非紳士的」という言葉が何度も出てくる、純然たる“紳士のスポーツ”なのです。
 GK以外の最後方に位置する相手DFのいるラインを擬似的にオフサイドラインと設定して、それより前では積極的にプレーに関わってはいけない。これまさに「紳士たれ」という教えが生きているルールだと思いませんか?
 
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■ルールから見える“サッカー”

 このことを知ったからといって、すべてのシチュエーションでオフサイドの判定が正しくわかるとは思いませんが、少なくともサッカーの理念は理解できるはずです。このオフサイドのルールも時代とともにいくつか変更が加えられています。サッカーの成立当初はラグビーと同じく前方へのパスはすべて禁止されていました。そこからいまよりも一人多い、GK+DF2人がゴールラインとボールの間にいなければならない「3人制オフサイド」、そして1925年に現行のGK+DF1人のオフサイドのルールが制定されました。ルールの変更に伴い、フォーメーションや戦術、サッカーの質そのものも大きな変化を経験しています。
 
 オフサイドラインを積極的に守備に活用した「オフサイドトラップ」が生まれ、お互いのチームがオフサイドラインを浅く設定することでプレーエリアが狭まり、現代のコンパクトで、スペースの少ない、激しいサッカーが行われるようになりました。
 
 オフサイドって何だろう? あのプレーはなんで反則なの? そんな問いかけが生じたとき、ふと立ち止まって、サッカーの歴史やルールの作られた背景、その裏に隠された理念を考えてみるのも、サッカーを知る近道なのかもしれません。
 
 
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部

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