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マンチェスター・ユナイテッドFCの育成コーチ、ケビン・ウォード氏は、マンUの指導メソッドの特徴について、以下のような考え方を教えてくれました。
「プレミアリーグのクラブは8対8を行うチームが多いのですが、マンUアカデミーの場合、特にU-13辺りの年代は4対4を重視します(GKを入れると5対5)。そこから徐々に年齢が上がるにつれて人数も増えていきますが、マンUは4対4の練習の比重が多く、トップチームもよく行っています」
なぜ、マンUは4対4を重視しているのか? 理由は大きく分けて2つあります。
■少人数のゲームを行うことで技術を身につける
1つ目の理由は、少人数のミニゲームを行うことで選手1人1人のボールタッチ数を増やし、技術をしっかり身につけるためです。マンUの場合、他のプレミアリーグのクラブに比べて技術を重視しているため、8対8のような大き目のゲームに移行するまでのミニゲーム練習を行う期間が比較的長くなっているのです。
さらにケビン氏は、選手の意識についても言及しました。
「小さなゲームでは選手が隠れることができない。ゲームはいちばん優れた指導者です。私が選手をがんばらせているのではない。ゲームが選手をがんばらせているのです」
大きなゲームであやふやになる個人のミスなども、4対4くらいの大きさではすべて明らかになります。手を抜くことができません。少人数のゲームを重要視する理由は、このようなところにもあります。
■最低限、サッカーの陣形に必要な人数とは?
そして、マンUが4対4を重視する2つ目の理由は、『4vs4がサッカーの陣形を作るための最小単位』であるためです。少人数のゲームなら2対2や3対3でも構わないはずですが、あえて『4対4』を選ぶのはなぜか? 下のイラストを見てみましょう。
4対4で4人をピッチ上に配置すると、上記のようにそれぞれがダイヤモンド型の陣形を作ることができます。この階層の数がポイントなのです。
ピッチ上に4人がいれば、図のようにアタッキングゾーンに1人、ミドルゾーンに2人、ディフェンスゾーンに1人、そしてそれらがサイドに線対称に散らばる陣形を作ることができます。3段の階層が出来ているというわけです。
ところが3対3で、同じチームに3人しか選手がいない場合はそうはいきません。
下側チームのように横幅を均等に割って1段の階層になるか、あるいは上側チームのように1人を前へ出して2段の階層にするか。いずれにせよ、3人ではピッチ上に3段の奥行きを作ることができないのです。
2段と3段の階層は大きく意味合いが異なります。
2段の場合は、自分の階層と味方の階層の間でのやり取り、すなわち2人目までのパスや連係プレーしか行えず、個人戦術の範囲内で収まってしまいます。チーム戦術として考えるためには最低でも3段が必要なのです。
例としてクサビのパスを考えてみると分かりやすいでしょう。DFからMFを飛ばしてFWへクサビを入れて、そのボールをMFへ落とす。こうしたプレーを行うとき、中間にいる味方MFを『飛ばしてクサビを入れる』というサッカーのビルドアップの発想は、そもそも陣形に3段以上の階層がなければ実現しません。
さらに4対4ならば3段の階層を作りつつ、左サイド、中央、右サイドとそれぞれ横幅を担当させることができるので、守備時のスライドやオフェンス時のサイドチェンジなど、4vs4はチーム戦術の入り口となる動き方を学ぶこともできます。
これらをまとめると、マンUの指導メソッドは、
●ボールタッチ数を増やして技術を高めるために、少人数のゲームを行う
●サッカーの陣形を作るのに最低限必要となる人数を確保する
この2つの最大公約数を取った結果、4vs4を重視する、という方向性にたどり着いたというわけなのです。
もちろん、ケビン氏や他のコーチたちも、指導を始めた20年前からこのような理論を完成させていたわけではありません。
「私が初めてコーチになったとき、いちばん最初のトレーニングには私1人しかボールを持って来ていませんでした。そのため、ほとんどの時間は木に引っかかってしまったボールを木登りして取りに行くことに費やされました。すると私たちは学び、次のトレーニングではみんなにボールを持って来るように伝える。このように指導者も一歩一歩、成長していくのです」(ケビン・ウォード氏)
ケビン・ウォード//
Kevin Ward
マンチェスター・ユナイテッドFC アカデミーに所属。イングランドFAが将来の代表選手となるべきユース年代の育成を目的に設立した「FAナショナル・スクール・オブ・エクセレンス」で指導経験を積み、U18のアカデミーコーチとしても12年間の指導経験を有す。マンチェスター・ユナイテッドFCアカデミーではコーチとして7年間、様々年代を指導。技術育成コーチとして指導に従事する傍ら、アカデミーのスカウト、保護者とのコミュニケーション、トレーニング・プログラムの作成とその質の向上の責任者も務める。
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取材・文/清水英斗(サッカーライター)、写真/TOTAL FOOTBALL
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