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テクニック

トラップとは、次のプレーに移りやすい位置へボールをコントロールする自分へのパス!?

2012年11月22日

キーワード:トラップ

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 サッカーの基本技術は「止める・蹴る・運ぶ」だと言われています。特に育成の現場では日本に限らず、指導者たちはこの3つの技術を重要視しています。
 
実際のプレーに置き換えてみると、それぞれ、トラップ、パス(またはシュート)、ドリブルということになりますが、なかでも一番に挙げられているのがボールを止める技術「トラップ」です。このトラップという技術は、日本語に置き換えられる課程で徐々に意味が変っていった経緯もあり、いま一つ捉えようのない言葉になっています。指導者の中には「ピタッと止める」という特定のボールストップを連想する「トラップ」という言葉を避け、ファーストタッチ、ファーストコントロールという言葉を使う人もいるようです。今回はボールを足で扱う上での最初の重要技術、トラップについて考えてみましょう。
 
 

■どうして「トラップ(罠)」っていうの?

 そもそも「トラップ」はボールを地面に押さえつけてストップするウェッジコントロールという技術が「ボールに罠(トラップ)を仕掛けているように見える」ことが語源になったと言われています。日本ではこのトラップという言葉をボールをコントロールする技術全般に用いるようになりました。その名残か、トラップと聞くと「ボールをきれいに懐に収めるストップ」のことを連想する人も多いようです。
 
 現代サッカーでは、中盤や前線で止まった状態、しかもフリーな状態でパスを受けることは希です。常にディフェンスからのプレッシャーに晒され、「動きながら」ボールをコントロールしなければいけません。トラップは本来何のために必要なのでしょう? 「ボールの勢いを殺して、きれいにボールを止める」スクールなどで、比較的最初に習うことかもしれません。しかし、それは数多くあるトラップの手段のうちのひとつでしかありません。
 
 言葉の定義は難しいのですが、トラップは「自分が次のプレーに移りやすい位置にボールをコントロールすること」です。相手ディフェンスに届かない場所、ドリブルを始めるために加速しやすい場所、パスを出しやすい場所、シュートにスムーズに移行できる場所・・・・・・。トラップのバリエーションをイメージしてもらうために前述のように「ファーストタッチ、ファーストコントロール」という言葉を使うのもひとつの手ですが、トラップという言葉はサッカーに触れている時間が少ない人にも定着している言葉です。ここでは初心者にもわかりやすく、「トラップ」という言葉のイメージをもう少し広くしていくことから始めたいと思います。
 
 

■上手いからボールを取られる!?

 ある中学生年代のクラブチームに取材に伺ったときのことでした。
 
「スペインに遠征に行ってきたんですけど、技術は充分通用しました。でもボールはほとんど取られた。それが差になってやられちゃいました」
 
 監督が言います。アンダーカテゴリーの国際大会や遠征試合などを見る限り、日本の子どもたちの基本技術の高さは世界でもトップクラスと言っていいようです。いわゆる個人技では年齢が下に行けば行くほど、日本のチームが際立って見えます。トラップに関しても日本の選手はぴったり足下に止められる。でもそれが逆効果だったというのです。
 
「うちの子たちが足下にボールを収めると、スペインの選手はそこを狙って思いっきり飛び込んでくる。正確に止めれば止めるほど、相手もそこを『狙って』くるんです」
 
 一方のスペインの子どもたちは多少荒さはあっても、常に動きながらボールをもらい「明確にボールが止まる瞬間がなかった」というのです。技術の正確さが裏目に出るなんて! 確かに「ボールを正確に止めようコンテスト」をしているわけではありませんから、ボールを動かしながら次のプレーにつなげていくスペイン流の方がよりサッカーという競技に即した技術を使っていると言えそうです。
 
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■トラップは自分へのパス

 ここでもう一度トラップの目的を考えてみましょう。「自分が次のプレーに移りやすい位置にボールをコントロールすること」。世界のトッププレイヤーにトラップの名手は数多くいますが、なかでもボールを動かしながらコントロールする術に長けていたのが元フランス代表のレジェンド、ジネディーヌ・ジダン選手です。長い手足をコンパスのようにしてボールを制御する様を見ていて、ああ、トラップって「自分へのパス」なんだ、とため息が出たものです。いいパッサーは味方選手が次のプレーに移りやすい位置にボールを出すことを心がけます。いいトラップは自分への最高のパスに他なりません。場合によっては足下に要求することもあるし、動き出しに合わせて前方に出してほしいときもある。スピンのかかったボールがいいときもあれば、回転の止まった状態でほしいときもある。それを考えると、きれいに止めることだけを目指したトラップはとても使い勝手が悪いものです。
 
「もっといいパスくれよ」味方選手に要求するのも大切なことですが、次にどんなプレーをしたいか、どこに走りたいか、すべてわかっている自分自身に「いいパス」(トラップ)を要求するのは、もっと簡単です。
「トラップは自分へのパス」そう考えると、トラップの持つ本来の意味、目的がはっきり見えてきそうです。
 
 次回はトップ選手の実例に基づいて「ボールを止めないトラップ」についてもう少し掘り下げてみようと思います。(11月24日更新予定)
 
 
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2012より)

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