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勉強と進路

たとえ公式戦がなくても工夫次第で子どもは育つ!! 正しいサッカーチームの選び方

2015年10月 2日

この時期になると小学6年生のお子さんを持つお父さんお母さんから、よくこんな相談を受けます。
 
「息子は中学に行ってもサッカーを続ける気持ちがあります。けど、去年から一足早く中学に通っている長女や、中学に通うお子さんを持つご近所さんからは、サッカー部はガラが悪くてしっかりとした活動はできていないという話を聞きます。うちの子はクラブチームっていうレベルでもないし、入れたとしても試合には出られないんじゃないか。どうすれば……」
 
中学生になってもサッカーをしたいというわが子のやる気を、今後の成長にうまく転じてくれるような環境でプレーさせてあげたい。それが親の心情でしょう。
 
通う予定である中学校の部活はしっかりとサッカーに打ち込める環境にはないようだから、街のクラブチームを探そうと思っているけど、そんな強いチームにいっても試合に出られないだろうし。どのチームがうちの子には合うだろう……。
 
今回は、そんな悩みを解決するヒントになるかもしれない『FCヴェラジスタ』という街クラブを取材してきました。(取材・文・写真 出川啓太[サカイク編集部])
 
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トレーニングマッチ中、ときに厳しい表情や態度で子どもたちのプレー強度を高めるFCヴェラジスタ・門脇監督
 

■公式戦に出場することで、失われるものもある

昨年、東京都世田谷区に『FCヴェラジスタ』というチームが発足しました。中学生年代、いわゆるジュニアユースと呼ばれるカテゴリーのクラブチームの多くは、チーム発足後にクラブユース連盟への加盟申請を行います。これは公式戦に出場するためです。加盟申請をおこないクラブユース連名から加入を認められてはじめて公式戦に出場することができるのです。ところが、このFCヴェラジスタの代表を務める門脇端午さんは「クラブユース連盟への加盟手続きを行っていない」と言います。
 
「これは非常にニュアンスの表現が難しいところなのですが、わたしは公式戦に出場しなくてもよいと考えています。これまでの指導経験のなかで、チームが公式戦に出ることによって子どもたちから失われてしまうことがあると感じています」
 
ここで読者のみなさんにひとつ認識しておいてもらいたいことがあります。それは、クラブユース連盟への加盟申請を行っても、何年も申請が下りないケースが少なくないということです。
 
※なぜ、クラブユース連盟に加盟できないのか。その理由が気になる読者もいるかと思いますが、記事の趣旨から逸れてしまうので、今回は割愛します。
 
「近所に新しいジュニアユースのチームができたみたい。けど、公式戦に出られないらしいよ」
 
あなたの周りにもこのような話がありませんか? これはつまりクラブユース連盟への加盟申請が下りていないということです。まずは、その認識だけでも持ってもらいたいのです。
 
そこであなたはこう思いませんでしたか?
 
「公式戦に出られないのでは、子どもがかわいそう。練習ばかりしていても上達しないんじゃないか」
 
きっと、あなただけに限らず多くの人がそう考えるはずです。しかし、公式戦に出られないからといって、子どもたちが必ずしも上達しないかというとそうではありません。門脇さんは「まず前提として、クラブユースに加盟しているチームは大事な役割を担っています。公式戦に出場することで、子どもたちが得られるものはたくさんあります。クラブユース連盟や公式戦を否定するつもりは毛頭ありません」と前置きしたうえで言います。
 
「ただし、公式戦に出場しなくても子どもたちを育てる方法はあります。公式戦に勝つ強いチームをつくりたくてクラブを運営しているわけじゃなくて、わたしの目的は、選手ひとりひとりのサッカー人生において大事なものをひとつずつ植えてあげることです。いずれはわたしの手元を離れていくわけです。そのときに彼らひとりひとりの才能が花開いてほしい。そのためにいまの彼らにひとつひとつ積み重ねる作業をしてもらいたいと考えています。それは必ずしも公式戦がないとできないかというとそうではありません」
 
門脇さんに見せてもらったチームスケジュールには、週末に高校生とのトレーニングマッチが多く組まれていました。その中には、尚志、市立船橋、前橋育英、成立、矢板中央、藤枝明誠などの強豪校の名前も。移動は門脇さんがチームバスを運転して遠征します。
 
「いまは毎週のように高校生とのトレーニングマッチが詰まっています。でも、この市船とのトレーニングマッチのあとは、強度を落とすためにあえてトレーニングマッチを外しています。公式戦がないことでスケジュールのアレンジが広がるのです。公式戦主導で動くのではなく、子どもたちの状態を優先して動ける。これは公式戦のないメリットです」
 
 

■運営と育成のはざまで、多くのサッカーコーチが抱える矛盾

公式戦に出れば、勝利を目指すことになります。出場した選手は勝つことで成功体験を得られるのですから、勝利を目指すことは当たり前です。もちろん、どのチームのコーチもできるだけ多くの選手に多くの時間プレーさせてあげたいと考えています。東京都のフレッシュカップのように、公式戦で出場時間を確保できない選手たちのための大会も用意されています。それは素晴らしい仕組みです。ただし、その仕組みの上を歩くことだけが正解ではないのではないでしょうか。
 
「子どもたちの大きな目標はプロサッカー選手になることでしょう。もちろん、想いの強さは子どもそれぞれですが。それを達成するための身近な目標のひとつが公式戦なのだと思います。それがわたしたちコーチが実践する『MTM』です」
 
MTMとは、マッチトレーニングマッチの略。つまり、試合をして得た課題にトレーニングで取り組み、その成果を次の試合をで図る。それを繰り返すことで選手を育てていく仕組みのことです。
 
「公式戦に出られないのであれば、トレーニングの成果を試す機会をわたしたちコーチが設定してあげればいい。公式戦と練習試合では選手のモチベーションやプレー強度がまるで違うという人もいますが、わたしはそうは思いません。プレー強度はコーチ次第で高めることができます。高校生との試合は中学生の試合よりもプレー強度が高いはずです。それと公式戦でモチベーションが高まるのは、試合に出場する子や出場できそうな子です。出場できないとわかっている子どもたちのモチベーションも、公式戦で上がるでしょうか。最終的に大会に合わせて考えるからモチベーションになるのであって、最初から大会がなければモチベーションにはなりません」
 
モチベーションのコントロールは公式戦がなくても可能だと、門脇さんは考えています。
 
「8月、1月、3月と民間の会社が運営する大会に出場します。夏の大会でそれまでのトレーニングの成果を試し、そこで出た課題に取り組み1月の大会に挑みます。さらに、そこで抽出した課題をトレーニングで解決して3月の大会に挑む。そうすると公式戦に出場するのと同じようなMTMを形成できます」
 
さらに門脇さんが言うには、そういった民間の大会は1チーム13人から登録できるそうです。つまり、試合に出られない選手を作らなくて済むということ。
 
「日本は我慢の文化です。一度入ったクラブで初志貫徹することが美学とされがちです。もちろん、試合に出られない経験を得られるということはネガティブなことではないですが、試合に出られないことが続くことが果たしてその子のためになるのか。それは考える必要があると思います。もちろん、試合に出られなくてもそこで頑張りたいと子どもが言うのであれば、それを応援するべきでしょう。でも、ちょっと精神的に弱っていたりする子には、環境を変えるという選択肢があるということを伝えることも悪いことではないと思います」
 
次ページ:自分の目や耳でチームを見て、子どもの決断を尊重してあげること
 
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取材・文・写真 出川啓太[サカイク編集部]

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