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寝る子は育つ? 牛乳効果ある? 気になる身長について①

公開:2013年10月31日 更新:2020年10月 6日

キーワード:成長成長ホルモン牛乳身長を伸ばす

■普通の生活が大切な理由

 身長が伸びない原因には、ホルモン異常の病気や遺伝的要因、体質的な要因の他に、生活環境、ストレスが大きく影響すると言われています。
 
「栄養、睡眠、運動の3つは成長に欠かせない環境要素です。これらの要素は、その子なりの成長をサポートしますが、その子なりの成長以上の成長をもたらすことはできません。睡眠不足や低栄養がなどの環境要素が続くと、当然成長率は落ちます。意外かもしれませんが、過度な運動も成長を阻害します。通常のサッカーの練習は適度な運動と言えますが、過剰なトレーニングやしごきのような運動で体重が減るようでは、成長を阻害する例もあるのです。運動は代謝を亢進して成長しやすい状況を作りますが、過度な運動で体重が減るようでは、成長にはマイナスです。運動したら、その分栄養を多く取る必要があります。普通、普通と言っていますが、最近は“普通”でない生活をするお子さんが増えていますね」
 
 栄養、睡眠、運動。現代社会では、生活の多様化でこれらが“普通”とかけ離れてしまうケースも少なくありません。受験などもその典型ですが、睡眠不足やストレスで成長が停滞することはよくみられます。それぞれ事情がある場合も多いでしょうが、お子さんの成長を考えるなら、規則正しい生活を送るように心がけましょう。
 
 では、普通の基準はどこにあるのでしょう? ここからは簡単なQ&A方式に切り替えて、身長の伸びを邪魔しない生活について考えてみましょう。
 
Q.「寝る子は育つ」と言いますが、睡眠時間は長い方が身長が伸びるのでしょうか?
 
A.身長を伸ばす大きな要因である成長ホルモンは起きている時間よりも寝ている時間に多く分泌されることが分かっています。しかし、これは寝れば寝ただけ多く分泌されるわけではありません。成長ホルモンは深い睡眠に入ったときに分泌されるので、極端に短い睡眠や浅い眠りが良くないのは事実です。長く寝ても、後半は浅い眠りの時が多いので、最低7時間しっかり寝れば、成長には十分な成長ホルモンが分泌されると思います
 
Q.最近、よく言われる「午後10時から午前2時が最も多く成長ホルモンが分泌されるゴールデンタイム」というのは本当ですか?
 
A.これもよくある誤解です。成長ホルモンは特定の時間に分泌されるものではありません。極端なことを言えば、何時に寝ても深い眠り(深睡眠)の状態になれば成長ホルモンは分泌されます。ただし規則正しい生活のためには10時前に寝ておくのはとても良いことですよね。
 
Q.やっぱりたくさん食べたほうがいいんですよね。
 
A.栄養は身長を左右する大きな要素です。しかし、生まれてから3歳から4歳までにミルクの飲みが悪かったり離乳食の食べ具合が悪かったりして、背が低くなってしまった子どもたちは、体質的に多く食べることができない可能性が高いのです。無理強いしてしまうと、精神的ストレスがかかりこれも良くありません。食べない子に食べさせるのは、基本的に無理なのです。逆に食べるからといって肥満になるほど食べさせると、身長は少しは高くなるかもしれませんが、肥満による障害や思春期が早く来るなど、成長にマイナスになる問題が発生します。
 
Q.背を伸ばすには牛乳ですよね? カルシウムを多く摂れば背を伸ばせるんでしょ?
 
A.実はカルシウムには骨を強くする力はありますが、背を伸ばす力はありません。背を伸ばすのに必要な栄養素はタンパク質です。牛乳はカルシウムが豊富ですが、蛋白源としては不十分。牛乳神話も嘘! と言わざるを得ません。タンパク質だけを取るのは不可能ですから、身体全体のことを考えてさまざまな栄養素をバランスよく摂る必要があります。
 
Q.バスケットボールをしていると背が高くなる、サッカーをしていると短足になる……成長は、やっている競技に左右されますか?
 
A.これも誤解です。バスケットボールやバレーボールはひざを伸ばす動きが多いので背が伸びる! というまことしやかなうわさがあるようですが、そういう事実はありません。背が大きいと有利なスポーツに背が高い人が集まるのは自然なことでしょう。筋トレをすると背が止まってしまうという話も聞きますが、筋肉がつく時期は男性ホルモンが十分に分泌される思春期後半なので、筋肉がつき始めるころには身長の伸びはほぼ止まってくる時期なのです。成長のタイミングの問題で、筋肉がついたから背が伸びないわけではありません。筋肉モリモリの体の大きなアメリカンフットボールの選手も、たくさんいるではありませんか。
 
どうだったでしょう? これは意外! というお話のオンパレードだったのではないでしょうか?「いいと思ってやっていたことが間違いだった」ならばまだいいですが「むしろ逆効果だった」とならないように、Q&Aをよく読んで実践していきましょう。
 
次回は、あのメッシも治療したといわれる「低身長症」について詳しくお伝えします
 
背が伸びずメッシも治療した低身長症とは? 気になる身長について②>>
 
 
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田中敏章
医学博士。1973年東京大学医学部卒業。たなか成長クリニック院長。日本で成長ホルモン治療が開始された1975年から、神奈川県立こども医療センター、虎ノ門病院、国立小児病院そして国立成育医療センターにおいて一貫して成長ホルモン治療を中心に成長障害の臨床を行う。2007年たなか成長クリニックを開院。日本成長学会理事長、日本小児科内分泌学会評議員、日本内分泌学会功労評議員、公益財団法人成長科学協会理事長、昭和大学医学部客員教授。
 
たなか成長クリニック>> 
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)

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