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運動能力

「首を振れ」は正しい!?首を振らずとも目を動かせば情報は入る

2014年11月 7日

キーワード:アレクサンダーテクニーク声掛け

周りが見えない。動きが固い。それは必要以上に身体が緊張していることに原因があるのかもしれません。
 
身体の緊張を取り除くスペシャリストの高椋浩史さんと、水戸ホーリーホックの下部組織でコーチとして活動する村松尚登さんを迎えてお送りする対談企画も今回で最終回。これまで、試合中や練習中に身体が緊張することで生じるデメリットや、緊張を取り除くことで生まれるメリット、さらには緊張させないコーチングや練習メニューを考えてもらいました。今回は、広い範囲の情報を受信できるようになるコーチングや身体の使い方にクローズアップしていきます。(取材・構成/中村僚 写真/田川秀之)
 
<<「集中しろ」の矛盾。サッカーは意識を分散させるスポーツである
 
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■意識を分散させる声かけや練習

村松:あえて意識を分散させる声かけや、練習のノウハウをもう少し話し合いたい。身体動作からなるべく緊張感を解きたい、ニュートラルな姿勢を保ちたい、相手の逆を突きたい。そのためには情報収集しつつ逆を突くというのは『見る』よりも『眺める』というコーチングのほうが良い。いろいろなところに意識をもつことで、結果的に身体はリラックスしている。いいリラックスモードをとるために、意識を適度に散漫にさせたい。
 
高椋:たとえばパスの練習。日本の選手を見ていると、ボールに意識を向けながら蹴る人が多い。バルサのパス回しを見ていると、パスを出す先に意識が向いている。「次になにをしてほしい」と意図をもって、そこに蹴っている。ひとつ一つのプレーが、ボールではないなにかとの関係になっている。
 
村松:それは戦術的なコーチングで改善できる話だよね。パスを出す時に「次の選手になにをしてほしいか」を考えさせることが、意識を広げるってことにつながる。ぼくの好きな練習メニューで、ミニゲームでインターセプトされたらその度にでんぐり返しする、というのがある。身体が向いている方向とパスを出す方向が同じ状態でパスして、インターセプトされたらでんぐり返し。通ったらOK。小学校の時に学んだ軸足と体が向いている方向に蹴るインサイドキックでももちろんOKだけど、その蹴り方だとどっちに蹴るか相手は読みやすい。だから、選手たちは蹴り方を工夫し始める。と同時に、蹴り方を工夫するために他のことも工夫し始める。
 
このメニューは視野を広げることにつながると感じている。「見ている方向じゃないところに蹴らないとでんぐり返しさせられる」と意識する。それと同時に、軸足が蹴る方に向いていたら相手は読んでくるから軸足が向いてない方向に蹴ることも意識する。事前に右や左や後ろを見ておかないとノールックパスは出せないから、必然的に事前にキョロキョロするようになる。それで結果的に視野が広がった。言葉を変えると、意識の範囲が広がったと言えるかもしれない。
 

■周りを見るのに首を早く振る必要はない

村松:音にしろ、気配にしろ、実際はいろいろな情報が入って来ている。だけど、それを見ようとするから受信できない。相手の気配とかはもともとあるんだけど、選手が感じ取っていないだけ。意識の範囲を広げることは、情報を探すということ。「情報はいっぱいある。でも、お前が感じられていないだけだよ」っていう方が、自分の立ち位置をより伝えやすいのかな。
 
 
高椋:そうかもしれない。自分の居所が明確になる。
 
村松:「いろいろな情報があるんだよ。自分の相手の背後にもいろいろな動きや情報があるんだよ。それに君が気づけていないだけだよ。気づけるようになろうね」っていうアプローチの方がいいかもね。自分の背後を感じ取れるかどうかは、サッカープレーヤーの幅を大きく変えると思う。
 
高椋:もっと言えば「いつでも後ろから斬られるかもしれないよ」って(笑)。
 
村松:他のチームのコーチを見ていて「なるほど!」と思ったのは「首を速く振るなよ。ゆっくりでいいから」という声。「首を動かさずに目の動きだけで見える範囲は広いからね」って。たしかに首を動かさない方が相手に読まれない。「目を動かせば、いまお前が首を振って見たここまでは見えているよね」って。それは理に適かなっている。それに、そのコーチは身体動作の専門家だからそのアドバイスにたどり着いたわけではないと思う。
 
高椋:それはすごくいいと思う。首も目も必要な範囲で動く。目の動きも、どういった情報が欲しいかで変わる。
 
村松:そういった方向に選手を導きたい場合、どうアプローチしたらいいのかな? 目が動いている時に「仲間がいる」、「相手がいる」と一つひとつ考えてたらダメ?
 
高椋:「こっちになにがあった?」「後ろになにがあった?」とか。認知から始まって、一番細かい筋肉が動いて、だんだん大きい筋肉が動いていくのが理想。筋肉や身体を動かすよりも、なにを見たいのかという意識のほうが重要。
 
村松:そうなると、やはり「見る」よりも「眺める」という声掛けがいいのかも。でも、「ぼんやりと眺める」ってアドバイスは子どもに使うのは難しいかもしれない。本当にぼんやり見ちゃってなにも認識できない可能性もある。
 
前述のチームは、練習のリラックス感や柔らかさを、そのまま試合で発揮している。緊張していないし硬くない。なぜ選手がそこまでしなやかに動けるようになったのか。しかも、そのリラックス感の動きの中に速さがつねに存在する。高椋にも試合を一度見て分析してほしい。彼らのプレイ中の姿勢はスラっと美しく、首も緊張してなくて目線も「眺める」感覚をもっているように見える。
 
高椋:彼らの意図はどこにあるのかな。ゴールはどういう結果として生まれていると考えているの?
 
村松:彼らは上のレベルで通用する選手を育てようとしている。それが彼らの目的。他のチームでは育てられない、ボールをパーフェクトに扱えて、しかも状況判断にも優れた選手を育てようとしている。
 
高椋:ゴールはサッカーの一番の狙いじゃないですか。目的がないと方向性も生まれてこない。だけどゴールに意識が集中し過ぎると選択肢が狭まる。『エンドゲイニング』と呼ばれるもの。目的に意識が走りすぎて、いまこの瞬間がおろそかになる。
 
村松:彼らの前に急がないスタイルが、選択肢を多く持った形でのプレーにつながっている。彼らが育てたい選手は選択肢がたくさんある選手。相手選手からすると、どう仕掛けてくるか分からなくて、こっちはその選択肢をどれでも選べて、見てる方もワクワクする選手。
 
高椋:極論を言えば、彼らは自分のゴールの方にドリブルしていく可能性ももっているというだね。それはプレーをすごく自由にさせると思う。ただ、まったくゴールを意識してないわけじゃない。ゴールはあるけどゴールだけに意識が集中してなくて、結果としてそのプロセスを経ていて、どこかでそこにたどり着く。

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取材・構成/中村僚 写真/田川秀之

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