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運動能力

周りを「見ろ」より「眺めろ」。身体の緊張をとる言葉選びとは

2014年10月24日

キーワード:アレクサンダーテクニーク声掛け

あなたは、サッカーをプレーする子どもにどんな声掛けをしていますか? 子どもは大人の意に反して行動するもの。良かれと思って掛けた声が、子どもの身体に緊張を生みパフォーマンスを低下させてしまった、そんな経験を持つ読者も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、身体の緊張を取りのぞくスペシャリスト高椋浩史さんと、FCバルセロナスクールのコーチを経て、現在は水戸ホーリーホックの下部組織でコーチをする村松尚登さんの筑波大学サッカー部同級生コンビに、サッカーにおける身体の使い方や、緊張をほぐすための指導方法を教えてもらいましょう。(取材・文/中村僚 写真/田川秀之)
 
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■足でボールをあつかうサッカーに生じる『矛盾』

村松:ぼくの中の課題は、サッカーは「走る、動く」という移動の動作と、ボールをあつかう動作を同じ足でしなければいけない矛盾を、どう克服していくか。速く動きたかったら筋肉を収縮させる必要があるけど、しなやかなボールタッチをするためには筋肉をリラックスさせなければいけない。それをトレーニングに落とし込むのが非常に難しい。
 
ハンドボールやバスケットは走ることに足を使い、ボールをあつかうことに手を使う。だから、トップスピードで動きながらしなやかなテクニックを表現するのに矛盾が発生しない。
 
もっと言えば、サッカーの場合はボールが足元にあるから視線が下がる。でも、周りを見るには視線を上げなければいけない。そうすると今度はボールが見えないという矛盾が生じる。「ボールをしっかり見てトラップしようね」と言いつつ「周りを見ようね」というのも矛盾のひとつになるよね。
 
高椋:自分が動いている最中になにをしているか。それが分かるようになるための基礎練習は、サッカーの練習の中に組み込めると思う。いろいろな身体の動きを知ってもらい、体感してもらうこと。それが分かるようになってきたら、ボールを受ける瞬間に、どこの部位を縮めているか、固めているかも分かるようになる。
 
そうすると、自分で選択肢を増やせる。ぼくのようなアレクサンダーテクニークの講師だったら、少し強引に手を使って「こっちだよ」と過剰に緊張している部位を教えられるけど、サッカーのコーチには難しい。長い目で見て、選手たちの体の感覚を研ぎ澄ませてもらうためのトレーニングだったらある。
 
ぼくがやりたいのは、トップの選手をたくさん育てるよりも、平均的な選手の身体の使い方のレベルを上げて、その中からいい選手を出すこと。強豪でもなんでもない高校の選手たちの身体の使い方が一段階向上したらおもしろいと思う。
 
 

■自分の身体を操作することが苦手な日本の子ども

高椋:日本人は身体の前側を使って縮む傾向がある。一方、外国人は背中側をよく使う。
 
江戸時代や明治時代の人の歩いている姿勢を辿っていくと、戦後くらいまではすごくいい。それが1970年代になると、私たちが見慣れた感じの歩き方(骨盤後傾で猫背ぎみ)で多くの人が歩いている。戦後から高度経済成長期にかけて、日本人の姿勢はだんだん悪くなってきたことが見えてきた。いま、そういう環境の中で育っている選手たちがいっぱいいるから、日本人の平均的な身体の使い方のレベルは低いのかもしれない。でも、それは生活環境に問題があるということで、日本人に備わっている潜在的な身体の動かし方が悪いわけではなさそう。だから、少し取り組めば良くなるかもしれない。
 
村松:姿勢がいいかどうかは人それぞれ。ぼくはそう思っている。ぼくがいままでに携わってきた選手の中にも、すごい猫背にもかかわらず驚くほどサッカーがうまい選手が多くいた。
 
悪い姿勢で座る習慣が体に染み込んでいるから、姿勢はなかなか変えられない。それでもサッカーはうまい。そういった選手の姿勢を改善してあげれば、伸びしろが増えるのかもしれない。
 
でも、そういう選手はきっと山ほどいて、「じゃあアレクサンダーテクニークに行ってください」というのは現実的じゃない。ぼくたち現場の人間が、より分かりやすく伝えるアプローチ方法はないのかな。
 
ぼくが知っているチームで、緊張から解放されてプレーできているように見えるチームがある。でも、「緊張から解放しよう」 とコーチが指導してそうなったわけじゃない。一つひとつの動作を「このレベルでできるようになろうね」と練習を重ねて、結果的にボールあつかいがうまくなり、同時に身体動作が無意識に習得されていったと思う。課題が成功に達した時には、それに必要な身体動作が必ず身につく。そっちの方がサッカー少年の心を掴めるよね。
 
高椋:「自分の身体を操作する」ことに意識がある子は、オットセイ(ボールを頭に乗せて維持するトレーニング)の練習をすると、自分の身体を動かしてなんとかしようとする。センスのある子は、ボールの重さを感じとれる。それは首が固まってないから。ボールの重心を感じて、それに合わせてただ体を動かしていくことができる。
 
村松:身体感覚が優れているか優れていないかで分けると、優れていない子がほとんど。普通にサッカーをやっている選手は、身体をどう動かすかという感覚はすごく低い。感覚の優れている選手はごく少数。子どもの「身体を感じとる感覚」に期待しても、なかなかうまくいかない。
 
たとえば、逆立ち。ぼくが見ているチームで、補助役ありで逆立ちをさせても、たくさんの選手が足を上げきる前に落ちてしまう。本人は真上まで足を上げているつもりでも、相方は「全然届いてねえし!」と文句を言う。どこまで足が上がっているか分からないのは、逆立ちをしたことがない=自分の身体に対しての感覚が鈍いから。この身体感覚を磨きたいんだけど、やはりサッカーはボールありきのスポーツなので、ボールを使ったトレーニングの方が現場に落とし込みやすい。そういう意味で、オットセイの練習は分かりやすい。
 
アジリズムもわかりやすい。下半身と上半身がバラバラに動くから。アップテンポなハウスミュージックで動きが速いから、バランスがよく重心移動がうまくなければできない。ただ、ボールがないから「これ本当にサッカーうまくなるの?」という疑問はある。

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取材・文/中村僚 写真/田川秀之

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