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親子でチャレンジ

コップを落としても怒らないで!子どもは失敗をして成長する

2015年6月12日

キーワード:コミュニケーションドイツ親子

ぼくが所属するFCアウゲン∪19(∪19・4部リーグ)は2人監督体勢でやっています。一人はぼくで、もう一人が今回の主人公、イタリア人指導者のアンドレアス・スカルチ、通称アンディです。付き合いはすでに10年以上。当時FCヴォルフェンバイラーU13監督のぼくと、ライバルチームのアルマニア・ミュルハイム監督のアンディという出会いでした。2年前に新天地としてやってきたアウゲン∪19で再会。それまでの経緯もいろいろあっておもしろいのですが、長くなるので又の機会にさせていただきます。
 
当初は別に監督がいて、ぼくらは二人ともコーチの立場だったのですが、その監督が2ヶ月後に他クラブのトップチームに引き抜かれる形でチームを離れ、アンディとぼくの2人監督体勢でチームを率いることになりました。(取材・文 中野吉之伴)
 
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■言いたいことを言葉にすることの重要性

コミニュケーション能力の高いアンディがチームをまとめ、クラブとの橋渡しを担い、ぼくが練習での指揮、戦術指導などの責任を持つようになりました。3児の父親でもある彼とは、非常に馬が合うというか、一緒にいてストレスを感じない間柄。2人監督体制だとお互いの考えがぶつかり合ってうまくいかないとよく言われますし、イタリア人と日本人がドイツチームを教えるという、ちょっと違和感を感じさせる関係性でもあります。確かに戦い方やスタメンなどで意見を衝突させることも普通にありますが、この1年半、お互いの信頼関係が揺らぐような大きな問題はひとつもありませんでした。
 
そんなぼくら2人が特に重要視しているのがコミニュケーションを密に取る、つまり暗黙の了解を前提に動かないようにすること。不思議と二人のサッカー観は似ており、練習前に言葉をかわすと同じことを考えていることが多いのですが、その状況に甘えてしまうと大切なところで意見の相違が出てしまう。
 
「キチ、言いたいことは必ず言葉にして言ってくれ。俺も言うようにするから。一人で解決しようとするんじゃない。一緒に解決していくんだ」
 
アンディは良くそう言いますし、そうしなければならない事情もあります。ドイツのアマチュアクラブでは指導者の活動は基本的にボランティア。アウゲンは強豪クラブの一つですし、多少の支払いはありますが、それでも高校生がバイトで稼ぐ額の方がずっと多いというのが現実です。当然ぼくもアンディも別に仕事をしています。できるかぎり練習、試合に顔を出すようにしますが、毎回は無理。一人で練習を見なければならないことも多くなります。だからこそ、互いに密に連絡を取り合い、その日あったことを報告し、次の練習、試合に向けてどうしたらいいのかを意見交換する。アンディはお互いの良さを尊重しあって、それぞれの長所を発揮できるようにと気を配ってくれるから、こちらもすごくやりやすい。どんなに思い通りにならず、時に怒鳴ることがあっても、必ずあとでその人と言葉をかわし、お互いに納得する落とし所に持っていく。当たり前のことですが、だからこそとても大事なことではないでしょうか。
 

■「やらなければいけない」ではなく「自分も関わりたい」と思える雰囲気をつくろう

こうした点はクラブの活動をサポートしてくれる父兄の方々にも当てはまることだと思います。忙しい時間をやりくりしてクラブのために送迎の車を出す、子どもたちの飲み物や食べ物の準備をする、催し物が行われるときにスタッフとして参加する。そうした支えなくして、クラブは成り立たないのですから。「やらなければいけない」からやるのではなく、「自分も関わりたいな」と思える雰囲気があることが理想でしょう。そのためには手伝ってもらえることを当たり前と思わずに、あるいは「手伝ってやっているんだ」ということをひけらかさず、助けあっていることを互いが認識し、尊重し合う。このように指導者と親、チームの大人たちが健全なコミニュケーションを取れたら、それはクラブでプレーする子どもたちに喜びをもたらす礎になると思うのです。
 
アンディの話に戻りましょう。コーチとしてだけではなく、同じ父親として子どもへの接し方に共感を覚える点も多いんです。昨年までは∪19と掛け持ちで、息子のいるU7でも監督をしていたアンディはよく持論を口にします。
 
「小さい子どもにあれこれ言うのは間違っているんだ。まずはやりたいようにやらせてみればいい。間違いだと気付けば自分で何かを変えようとする。大人が焦ってあれこれ言うのはプレッシャーになってしまう」
 
「もちろん、間違いを正すことも大事だよ。とくに友達やコーチを悪く言うのは良くないだろう。悪いことは悪いと怒ることも必要だ。でもね、子どもは失敗ををするものだろ。例えばコップを落としてしまったとする。子どもは自分で『あ、やっちゃった』と思っているよ。そこでさらに怒鳴ったりしたらどうなる。さっと片付けて、怪我がなかったことを喜んで、『今度は割らないように気をつけよう』と、ちゃんと伝えればいい」
 
「この前、打ち上げをやっただろ? あの時うちの次男と長女もずっと一緒にいたんだ。夜中まで起きていたけど、すごく幸せそうだった。思う存分飛び跳ねて、はしゃいで、疲れ果てて眠れることがどれだけ幸せか。そうやって自分たちを優しく見つめる大人の存在を、彼らもまたちゃんと感じてくれるんだよ」
 
「子どもにとって必要なことは、幸せを感じる瞬間だ」というアンディの言葉を僕は素敵なことだなと思っています。
 
次ページ:チームで価値観を共有できる仲間を見つけよう
 

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取材・文 中野吉之伴

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